好きな本
「今週の驚き」から 好きな本の話題
愛の妖精 ジョルジュ・サンド 中公文庫ジョルジュ・サンド 愛の妖精
「サンドは悪女」という先入観を ひっくり返す

プーシキン 贋百姓娘
絵に描いたような コメディー展開
王様の仕立て屋王様の仕立て屋 大河原遁 SJジャンプコミックス 集英社
主人公は イタリアに住む 紳士服仕立て職人の日本人男性。
人生の壁にぶち当たった依頼人を 注文服の魔法でハッピーに!
という各話完結マンガです。

例えば第1話、仕事中毒 会社で孤立 離婚が確定的な父に
想いをこめた誕生日プレゼントとして 娘さんがスーツ注文。
主人公は 神ワザ駆使して 肩まわりピッタリ、父親を生まれ変わらせる
スーツを作ります。本人のサイズをはからないで…

腹の底から笑えるマンガなのですが セリフに深みがあります。
「反対意見の持ち主を こういう言葉で説得するのか」と考え込むこともあります。
このマンガのように「目の前にいるお客さんを 幸せにしていくのが職人仕事、
すべての仕事の原点」と思うのですが、若い学生さんには 全く理解できないようです。
(2012.3.3.) 
嘘つきアーニャの真っ赤な真実 米原万里嘘つきアーニャの真っ赤な真実 米原万里 角川文庫
中学時代仲の良かった同級生に、30年ぶり会いに行く様子を
描いています。チェコのロシア語で教育する学校の同級生は
ギリシャ人、ルーマニア人、当時のユーゴスラビア人の 3人。
普通の日本人には想像もつかない内容が 語られています。

読み物として面白く、人生の味を感じさせる文章は、凄い。
ロシア語学校 時代の教育の おかげかもしれません。
子供のうちから 大人の言葉で書かれた名作文学を 読んで
要約を 言わせられたんだそうです。
全体像をつかみ 自分の言葉で説明するわけです。
日本だと 点付けにくい、先生面倒、不平等に扱ったと親からクレーム来るでしょう。

同級生と再会できても かみ合わない会話…打ち切るように 文章が終わっています。
中途半端な まとめ方だな と思って、ふと題名が目に入り パッと謎が解けました。
本の題名でもある「変な日本語」実に見事です。
民族差別、激変した国際情勢が すべて具体例で書いてあるという 稀有な本。
(2009.9.1.)

オリガ・モリソヴナの反語法(集英社文庫)
同じ設定で 完全な フィクションとして書いた 謎解き小説も あります。
かなり重たい内容の500頁を 一気に読ませる力作です。(2010.2.19.) 
ドクトル・ジバゴドクトル・ジバゴ パステルナーク 新潮文庫(絶版)
(Amazon上巻 下巻
詩を書く医者ジバゴが ロシア革命、第1次世界大戦、国内戦争に
巻き込まれながら、「生きた」ことを描いた作品です。
運命の女性ラーラと出会っては 何回も引き離されます。

ノーベル文学賞を国の圧力で辞退させられた事件で有名ですが
格別な 味わいのある文学作品です。
1000頁でも記憶に残る場面の連続。
「全身全霊の感慨をこめている」文章を ショパンやスクリャービンの
ピアノ曲のように感じるのが 不思議。

パステルナークは ピアノ音楽に 縁のあった人です。
彼の父は 画家。スクリャービンとラフマニノフの演奏姿スケッチを残しています。
スクリャービンの隣に住んでいたこともあり、パステルナークは一時期作曲家を志す。
伝説の名ピアニスト・名教師G.ネイガウスと親しく、後にその妻と結婚。

「ドクトル・ジバゴ」は 映画化されて ヒットしました。伏線や思い入れを全部削り
筋だけ追った単純な映画にしてしまったので、がっかり。
(テーマ音楽は ピッタリだと思うけれど…)(2009.8.7.)
ロシアから西欧へ ミルスタインロシアから西欧へ ミルスタイン回想録 春秋社 (Amazon)
革命前のロシア出身で 西側に亡命したヴァイオリン奏者が
人生を 振り返った本。
1頁に 1〜2ヶ所笑えて、読みごたえが あります。
例えば オーケストラ との付き合い方は 役に立っています。

グラズノフの協奏曲を リハーサルした時のことである。
とてつもない記憶力のミトロプーロスは、オーケストラを止めると
楽譜も見ずに「すまないが 最後のフェルマータから147小節目を
もう一度弾いてくれないか?」
私は嘆願するように応えた。「申し訳ない。147小節目が
どんな小節か 覚えてません!ちょっと 歌ってもらえませんか」
もちろん オーケストラは大笑い。かねがね言ってきたように
リハーサルで オーケストラを笑わせるのは、いつの時でも いいことなのだ。
それで、彼らは よりよい演奏をするのである。


つきあいの深かった ホロヴィッツ、ラフマニノフ、ストラヴィンスキー、クライスラーの
思い出が 何十頁ずつも書いてあり、ありがたい本です。
圧巻なのは 昼寝中のラフマニノフの屋敷に忍び込んで、チェロのピアティゴルスキーと
ラフマニノフの「ヴォカリーズ」のメロディーを弾き始めたエピソード。

突然、ラフマニノフが部屋に入ってきた。
彼は眠そうで、角刈りの姿は囚人みたいに見えた…
一言も 発しないで ピアノに 向かうと、立ったままで
私たちの 伴奏を 始めたのである。
その美しかったこと といったら!
弾き終えた時、ラフマニノフは やはり一言も発せず部屋を出て行った。
目に涙を一杯に浮かべて。
(2009.8.7.) 
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