ピアニストが 語った本・書いた本
ピアニストが語った本、書いた本の「心に残った言葉」

スレンチェンスカ  メナヘム・プレスラー  リヒテル  チッコリーニ
ルース・スレンチャンスカ 平凡社スレンチェンスカ「音楽を 客席に 届ける」

(オーケストラとの長期の演奏旅行中に気付きました)
舞台を越えて その向こうに座る聴衆とコミュニケート
するのは、ほんとうに難しい。なかなか届かない。
手始めに ピアノを弾く私から顔の見える人…
オーケストラの第1チェロに向かって、音を届けてみました。
そうしていると、ある晩、第1チェロが 私のところへ来て
「ありがとう。今日は あなたの演奏を実に楽しみましたよ。
 あなたが 私に話しかけるように弾いてくれたから。」

客席1列目の人に向かって弾き…3列目の人に弾き…
舞台の向こうの人に、音を送り届けようと 努めました。
そうやって演奏旅行中、毎日 同じ試みを繰り返していた ある日、
縁もゆかりもない小さな町でスタンディング・オベーションを
受けたんです。


この方法は、毎日のように演奏する場合の やり方で、
いきなり本番で やったら ちょっと危険。 でも、仕上げ始めの段階で
「こういう音楽を味わってもらおう」と 練習するのは よいですね。

スレンチェンスカは、アメリカ生まれ。 天才少女として大活躍するが
15歳で挫折。「人生を 少しずつ立て直す」様子を 語っています。
最新刊で 30分で読める薄い本ですが、かみしめる言葉の数々、心に残ります。
ルース・スレンチェンスカ 94歳のピアニスト 一音で語りかける 平凡社 Amazon
メナヘム・プレスラーのピアノ・レッスン Menahem Presslerメナヘム・プレスラーの ピアノ・レッスン

あなたが しなければならないのは、
ベートーヴェンの求めていることが 感じられるまでに
自分の感性を鋭敏にすることです。

しばしば起こる間違いは、曲を弾いていると、
弾くことで感情が得られると考えてしまうことでしょう。
それは、単に音符を読み、それを再現しているだけです。
その曲を消化も していなければ、内面化も できていないのです。


プレスラーに師事した人が、レッスンの記録や人生など まとめた本。
読む文章もあるけれど、レッスンで教えたコメントが 中心になっている。
「小節数とコメント」を見ても、一般人には チンプンカンプンでしょう。

でも、上級のコンサート曲を 「どう弾くか」 わかって、役立ちます。
今どき珍しい 「オーソドックスな感覚」に 包まれました。
(右手左手の配分を変えるのが ちょっと 多いかな…)

プレスラーは、1923年ドイツ生まれ。 95歳。
ボザール・トリオで世界的に活躍。アメリカのインディアナ大学で教える。
メナヘム・プレスラーのピアノ・レッスン 音楽之友社 Amazon
リヒテルは語る ちくま学芸文庫リヒテルが(奔放に)語る

キーシンの弾くショパン、遺作のワルツホ短調を聴いた。
これをしのぐ演奏は ありえないと思う。
ただ、私は 二つの点を 心配している。
第一に、一気に弾き込んではいけない。
一生弾き続けることを考えてほしい。
第二は、点描主義画法だ。
キーシンには これがほとんど存在しない。もしかしたら、
暗い部屋で練習することが 全くないのかもしれない。


リヒテルは、20世紀後半に活躍した ロシアの超大物ピアニスト。
リヒテルが、気心の知れた 若い友人に 話した言葉が 本になっている。

ピアノ曲の話題ばかりなのだが、すぐに脱線!大幅脱線!
(オペラ、文学、絵画、ギリシャ神話、旧約聖書など…)
イメージ発想力が とんでもなく豊かで、初めて読んだ時、
キツネにつままれた顔に なってしまいました。
リヒテルは「このピアノ曲、どんな物語に たとえられる?」
という謎解きを 師匠から投げかけられたようです。
「リヒテルは語る」 ちくま学芸文庫 Amazon
私は リリコ・スピント…アルド・チッコリーニ

アルド・チッコリーニ わが人生 全音楽譜出版社オペラ歌手と同じように、ピアニストにも「役どころ」が
あると思います。 コロラトゥーラ、ドラマチック、
軽いレジェ、深いバス などです。
たとえば、ホロヴィッツは ドラマティックでした。
私は ドラマティックではありません。リリコ・スピントです。


もともと 「心を込めて 美しく歌える」声の持ち主が、
年を経るにつれて、幅広さ、力強さも 出せるようになった
という趣旨の 文章だと 思います。

昔々1980年代に チッコリーニの 演奏レコードを 買いました。
リストのバラード1番は、(曲のせいで?) むなしく、派手。
「珍しい曲が 器用に弾ける人」 「音を 並べているだけ」みたいで、
チッコリーニにも がっかりした印象が 根強く 残っています。

2000年代、チッコリーニ来日演奏会に 夢中になった生徒さんは
「滋味あふれる演奏! 生涯最高・至福のひととき!」と 感激。
私は 信じられず、「本当?」と 疑っていました。

ここ数年、若きチッコリーニの素晴らしい録音で、彼を見直しました。
スカルラッティ ソナタ集(You Tube)は、音楽を感じさせて 鮮やか。
Janine Micheau を伴奏した ドビュッシー歌曲集は、詩情豊か。
 マンドリン  垣の列  巷に雨の降るように(You Tube)

チッコリーニの語った本では、彼のこだわりが 穏やかに語られています。
すぐ効く 特効薬アドバイスは ありませんが。
アルド・チッコリーニ わが人生 全音楽譜出版社(Amazon)
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